「オンリー・ゴッド」〜神かどうか紙一重のカラオケ新世界映画爆誕〜

 

2011年に話題をさらった「ドライブ」でタッグを組んだライアン・ゴズリングとニコラス・レフン監督の最新作。
タイでキックボクシングジムをやりながら裏ではマフィアとして過ごすジュリアン(ライアン・ゴズリング)。ジュリアンの兄が少女を強姦殺人したことで逆に少女の父親に殺される。しかしそれを仕向けたのは警部補のチャンという男。その兄が殺されたことを聞きつけてアメリカからやって来た気狂いオバサンは兄殺しのチャンを抹殺せよと組織に働きかけます。
そしてマフィア組織軍団がチャンを追い詰めていくはずが、実はチャンは尋常ならざる強さと正義感をもった人物で、結局ジュリアンはチャンと対決する事になるのだが…。

なんか色んな意味で変な映画でしたね。とりあえず僕としてはドライブから変わらぬ緊迫感ある演出、撮影、それから照明がめっちゃかっこよかったですね。照明が本当に稀に見るかっこよさ。陰影と色使いが雰囲気全開で、たまらないです。赤を基調にして煉獄をイメージしたらしいんですが、相当そういった視覚イメージにこだわり抜いて作ったなって思います。

話はっていうとなんか、チャンと言う、中々にじんわり動く無表情系オッサンが、因果応報、勧善懲悪、信賞必罰、一刀両断、一撃必殺、山菜蕎麦、みたいなんを掲げて、一人でジュリアン率いるマフィア軍団を追い詰めていくってだけなんです。
しかもチャンはひとり殺すとカラオケを熱唱するという謎行動を繰り広げ、観るものを圧倒します(観客どころか中の役者も含めて)。
僕はここを爆笑すればいいのか、真剣に見ればいいのか非常に迷いまして、ここをどちらに取るかで、この映画がすごいよマサルさんなのか北斗の拳なのかくらい変わってきます。
まぁ、すごいよマサルさんをある種のビューティフルドリーマー=終わらない学園祭を永遠に生きていたい青春群像劇、みたいな切なくも輝かしい漫画とみることもできますし、北斗の拳をいい歳した大人が北斗百裂拳とか南斗水鳥拳!とか人前で大声で叫んでカラダをちちくり合う、世紀末で頭おかしくなった痛ナルシスト漫画とみることも出来るので、結局は切り口って話になってくるとは思うんですが。
オンリーゴッドもまさにまじめに見てたら変なとこでふざけてくるし、ふざけそうなとこで真面目になっちゃうしみたいな、やっぱりユニークな映画だったことは間違いありません。

近年タイ映画といえばアピチャッポン監督のブンミおじさんの森とか観ましたが、なんかああいうちょいとスローなテンポ感で、ゆっくりとした時間が流れていながらも実は割とシリアスな裏側があったり、仏教観やアニミズム的な何かがあったりみたいな(まぁこれ東南〜東アジア映画全般に昔からあるノリですが)とこに、アメリカンなマッチョ思想だけがぶち込まれて、悪い意味で欠陥のないヒーローコミックと化した、少しお馬鹿映画になってんじゃないかとも思えたんですよね。
チャンがどっからどう見ても屋台でパッタイ作ってそうな普通のおっさんなのに、やっぱ尋常じゃない強さでもってジュリアン軍団をメッタ斬りにしていく、しかもカラオケ歌う、しかも悪を取り締まる警察側っていう、なんすかね、わかりますかねこの万能感?
いやね、本当になんでもないホームレスのオッサンなのに、実は鋼のボディで、誰かを助けるときだけ強くなれるんだけど、それをやるたびに寿命が減るとかそういうの普通だと思うんですけど、チャン、警察ですやん。お前が警察なったらもう世界平和が約束されたやん、みたいな。無敵すぎでしょ!っていう。お前のっそり美学にそって動く暇あったらタイにはびこる犯罪全部取り締まれよ!みたいなツッコミ入れたくなりましたね。

「チャンは神」監督がインタビューで語ってました。

で、ジュリアンはというと気狂いオカンを抱えたマザコン野郎で、イケメンでモテそうなくせに女の扱いがわからず、自身の価値観もイマイチつかめていません。美女を前にしてただオナニーさせたり、道端で服脱がすだけ脱がしてなんかショボンてなるとか、こいつたぶんEDです。

で、構造的に考えてオンリーゴッドは、母という余計な庇護から、チャンと言う父の導きによって自立した個へと旅立つ、それがジュリアン、みたいなことなのかなと。「チャンは神♡」って監督が言ってるくらいですから趣き、神話なんでしょうね。
でもこの神話の捉え方が東洋のアニミズムとか八百万の神みたいなのと違ってるから、なんか、ブルックスブラザーズのシャツのボタン掛け違えたみたいな感覚の映画なんでしょうかね。いっそヴィヴィアン・ウエストウッドの服みたいにボタン掛け違えること前提のデザインだったら良かったんでしょうけど。いや、この映画はヴィヴィアン・ウエストウッドが折角変形デザインした服をすげーしっかりした形に切り取っちゃった、ッて感じがふさわしいかもしれませんね。ヴィヴィアンをして、それはそれでかっこええやんっていいそうですけど。(もはや何の話かわからない)

で、総評すると結構面白いです。最期まで、え?ってなるのでワクワクして御覧ください。

 



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